私たちの研究室で7年前に見つけ、最近注目を浴びるようになった糊代を持ったタンパク質(トラッピン)に関する基礎と応用研究を続け以下のような成果を得た。(1)組織トランスグルタミナーゼの簡便かつ高感度検出法の開発と応用:上記トラッピン分子中に含まれる糊代部分(セメントイン領域)に蛍光性タンパク質GFP(green fluorescent protein)を結合させた融合タンパク質を調製し、これが架橋酵素トランスグルタミナーゼの優れた基質になることを示した上で、組織切片上での活性染色に応用した。その結果、タンパク質を架橋する酵素トランスグルタミナーゼは、これまで予想されていた以上に多種多様な組織に存在し、各組織の形態・強度・バリアー機能の保持に関与していることが明らかになった。(2)神経変性疾患との関連:近年、トラッピンとトランスグルタミナーゼが、アルツハイマー病の老人班の形成やパーキンソン病のルビー小体の形成、さらにはハンチントン舞踏病に見られるCAG(Gln)リピート異常との関連が示唆され始めている。そこで、脳におけるトランスグルタミナーゼの局在を可視化すべく上記方法を試みたが、ラットの正常脳では発現量が少なく、人の病気の脳では新鮮な材料の入手が困難なために、今のところはっきりした答えが得られていない。
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