受容体型プロテインキナーゼをコードするlRE1遺伝子は、我々が初めてその欠損によって、酵母細胞がイノシトール要求性を示すようになることから見い出した遺伝子である。分子シャペロンBiPをコードするKAR2の転写誘導に必須であることがわかりその機能が注目されている。我々はlRE1欠損によるイノシトール要求性を抑制する遺伝子として酵母遺伝子ライブラリーより、HAC1とClN5を単離した。HAC1はもともと分裂酵母のCdc10を相補する出芽酵母の遺伝子として単離されたもので、bZIP構造を持つ。ClN5はミクロチュブリンの正常な機能に必要な遺伝子で、転写因子AP1と相同な配列を有する。また新たにイノシトール要求性を示すire15変異株を取得し、このire15変異株のイノシトール要求性を抑制する遺伝子として、ヒトcDNAライブラリーを用いたスクリーニングにより、TGFβ受容体の新しいサブタイプと、蛋白リン酸化の調節因子として良く知られている14-3-3-蛋白、プロテインホスファターゼタイプ2Aの調節サブユニットA、および蛋白アルギニンメチル基転位酵素の各cDNAを単離していた。今回ire15変異の解析を行ったところ、HAC1遺伝子に変異を持つことがわかった。さらにHAC1変異によるイノシトール要求性が、TGFβ受容体を始めとする、ヒトcDNAによって抑制されることも明らかになった。すなわち酵母細胞において、TGFβ受容体はHAC1遺伝子の欠損を補う形で作用している事が明らかになった。
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