ラット肝から分離されたオートリソゾーム膜には、肝臓のサイトゾル酵素であるベタイン・ホモシステインメチルトランスフェラーゼ(BHMT、p44)とその分解産物である2つのフラグメント、p35とp32が存在することが明らかになった。BHMTはオートファジーにおいて他の細胞質成分とともにオートファゴゾームに取り込まれ、最終的にリソゾームのカテプシンで分解されると推量されたが、その機構を明らかにするために、p44、p35、p32のそれぞれに特異的なペプチド抗体を使ったイムノブロットを行い、以下のことを明らかにした。 1) オートリソゾームをさらに細分画し、限界膜分画と、取り込まれた蛋白が酸変性して凝集体を形成しているセディメント分画とで、それぞれの分布の比較を行った。p44とp32は、両分画に含まれるが、p35は膜分画のみに存在した。 2) 新鮮な分離直後のオートリソゾームのプロナーゼ消化実験から、p44とp32は小胞の内側に存在するが、p35は外側の膜表面に付着していることが明らかになった。またp44からp35への分解はBHMTの基質や生成物を共存させておくと起こらなくなることから、サイトゾルで起こる人為的な反応でオートファジーとは無関係であると結論された。 3) p32は、オートリソゾームに取り込まれたp44から生成され、阻害剤非存在下ではp44は速やかに分解を受けるのに対し、カテプシン阻害剤存在下では限定分解フラグメントとして残ると考えられた。このことから、逆にロイペプチンやE64などのカテプシン阻害剤存在下で細胞にオートファジーを誘導し、p32が蓄積することを指標にしたオートファジーの簡便なアッセイ法が考えられ、初代培養肝細胞を使ってそのアッセイ法の有効性が確かめられた。
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