オートファジーは、リソゾームで細胞自身の蛋白質が分解される主要な機構であり、絶食や飢餓条件下で著しく促進される。オートファジーでは、細胞質成分を取り込んだ二重膜のオートファゴゾームが先ず形成され、これがリソゾームと融合してオートリソゾームとなり、取り込んだ蛋白を分解する。私は、オートファゴゾーム膜の特性を明らかにする手がかりを得るために、リソゾームとオートファゴゾームの融合したオートリソゾームの膜蛋白を解析してきた。KISGQ蛋白(p32)はこの過程で見出された新奇の蛋白で、N末端からのアミノ酸配列がKISGQで始まる。初年度において、イムノブロットやRT-PCRの結果から、p32は最近cDNAクローニングによってその全アミノ酸配列が決定されたbetaine homocysteine methyltransferase(BHMT.p44)というサイトゾルの酵素の限定分解フラグメントであることが判明し、p44は、やはりオートリソゾーム膜に新しい成分として見つがったAPIAG蛋白と同一のものであることが解った。 次年度では、BHMTがオートファゴゾームに取り込まれ、最終的にリソゾームで分解されるまでの機構を明らかにするための検討を行った。その結果、p44はオートファゴゾームに取り込まれ、オートファゴゾームがオートリソゾームに熟成する過程で完全に分解されること、リソゾームのシステインプロテアーゼ阻害剤を予め細胞に与えておくと、p32が分解されずに残り蓄積すること、が明らかになった。強調すべきは、p32の蓄積量は、オートファゴゾームからオートリソゾームへの熟成を反映することである。システインブロテアーゼ阻害剤存在下のp32の蓄積を特異抗体を用いたイムノブロットで検出することによって、オートファジーの簡便なアッセイが可能となり、オートファジーを研究する有効な手だてが確立された。
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