今年度の研先により以下の点を明らかにした。 1.NG108-15細胞の細胞内カルシウムイオン濃度に及ぼす影響を指標にして2-アラキドノイルグリセロールの構造活性相関を詳しく調べ、2-アラキドノイルグリセロールの構造がカンナビノイドCB1受容体によって厳密に認識されていることを明らかにした。また、Δ9-テトラヒドロカンナビノールにも2-アラキドノイルグリセロールと同様の活性があること、ただしΔ9-テトラヒドロカンナビノールにはpartial agonistとしての活性しかないことなども明らかにした。このことから、Δ9-テトラヒドロカンナビノールのもつ精神神経作用の多くは、本来のリガンドである2-アラキドノイルグリセロールの作用を撹乱したためであるという可能性が浮上してきた。 2.2-アラキドノイルグリセロールを蛍光誘導体にし、HPLCを用いて定量する方法を確立した。 3.この方法を用いてラットの各臓器に含まれる2-アラキドノイルグリセロールを初めとするモノグリセリドの分析を行った。その結果、脳以外にも肺、腎など様々な臓器に2-アラキドノイルグリセロールが含まれていることが明らかとなった。2-アラキドノイルグリセロールは中枢神経系だけでなく、他の系においても何らかの役割を担っているメディエーターである可能性がある。 4.NG108-15細胞を用いて、2-アラキドノイルグリセロールが脱分極に伴う細胞内カルシウムイオンの上昇を抑制することを見い出した。2-アラキドノイルグリセロールには、活性化した神経細胞の興奮を静めるという役割のある可能性がある。
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