研究概要 |
今回の研究により以下の点を明らかにした。 1. 多数の2-アラキドノイルグリセロールアナログを調製し、構造活性相関を詳しく調べた。その結果、カンナビノイドCBl受容体は2-アラキドノイルグリセロールの構造を厳密に認識していることが明らかとなった。カンナビノイドCBl受容体の本来の生理的なリガンドは2-アラキドノイルグリセロールである可能性が高いと考えられる。一方、Δ9-テトラヒドロカンナビノールにも2-アラキドノイルグリセロールと同様の活性があること、ただしΔ9-テトラヒドロカンナビノールにはpartial agonistとしての活性しかないことがわかった。Δ9-テトラヒドロカンナビノールのもつ精神神経作用の多くは、本来のリガンドである2-アラキドノイルグリセロールの作用を撹乱したためであるという可能性がある。 2. 2-アラキドノイルグリセロールを蛍光誘導体にし,HPLCを用いて定量する方法を確立した。また、この方法を用いてラットの各臓器に含まれる2-アラキドノイルグリセロールを初めとするモノグリセリドの分析を行った。その結果、脳以外にも肺、腎など様々な臓器に2-アラキドノイルグリセロールが含まれていることが明らかとなった。 3. トロンビンなどで刺激した血管内皮細胞が2-アラキドノイルグリセロールを生成すること、血管平滑筋細胞にカンナビノイドCB1受容体が発現していることなどが明らかとなった。これらの事実は2-アラキドノイルグリセロールが神経系だけでなく血管系においても何らかの重要な役割を演じているという可能性を示すものである。
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