研究概要 |
フラビン骨格をC-13,N-15,F-19で選択的に置換したリボフラビンを化学合成した。標識部位は、2-C,4-C,4a-C,10a-C,1-N,3-N,5-N,8-Fであり、これらの標識リボフラビン用いて、オキシ塩化リンを用いた化学的リン酸化反応とFAD合成酵素を用いた酵素的反応によりそれぞれ標識FMNとFADを合成した。この標識FMN,FADを用いて、それぞれ旧黄色酵素、アシルCoA脱水素酵素とアシルCoA酸化酵素を再構成した。 アシルCoA脱水素酵素に関しては、アシルCoAの1位から3位までの部分がフラビン環との電荷移動に大きく関与していることを示唆する結果を得た。アシルCoA酸化酵素においては、現在のところ、大きな進展を得ていない。旧黄色酵素に関しては、モデル反応として、NADPHから電子を受け取りシトクロムcや色素などへの電子伝達反応を行うことが知られているが、多核NMR測定から、NADP^+やシトクロムcと複合体を形成することにより、フラビン部分の電子密度がウラシル部分よりキシレン部分で高くなることを示唆する結果を得た。また、旧黄色酵素はビール酵母のサイトゾルに存在し、アルコール発酵過程の初期にそのタンパク質量が増加し、その後また減少することが明らかとなった。さらに、本酵素が一電子電子伝達系の酵素として作用する際に、その電子伝達を仲介するタンパク質の存在を示唆する結果を得ており、そのタンパク質の精製も始めている。
|