研究概要 |
本研究において、以下のような結果が得られた。 旧黄色酵素については、本酵素がビール酵母のサイトゾル画分に存在することを、本酵素の抗体を用いて明かとした。さらに、本酵素のビール発酵過程にともなう量的変化を調べたところ、酵母増殖の盛んなビール発酵開始後12時間の間に顕著な増加が見られ、その後アルコール発酵の進行にともない減少することが確認された。一方、アルコール脱水素酵素は、エキス切れとなる120時間後まで増加した。これらの結果は、発酵過程において、個々の酵素の増減が異なることを示しており、旧黄色酵素は、ビール発酵過程の初期または、酸素存在下において作用していることを示唆している。また、本酵素のモデル反応として、NADPHから電子を受け取りシトクロムCや色素などへの電子伝達反応を行うことが知られているが、フラビン骨格をC-13,N-15,F-19で選択的に置換した標識FMNで再構成した本酵素の多核NMR測定から、NADP^+やシトクロムcと複合体を形成することにより、フラビン部分の電子密度がウラシル部分よりキシレン部分で高くなることを示唆する結果を得た。 アシルCoA脱水素酵素に関しては、アシルCoAの1位から3位までの部分がフラビン環との電荷移動に大きく関与しており、アシルCoAがエノラート陰イオンとして結合するが、そのエノラートイオンの形成の容易さは炭素鎖の長短が影響していることを示唆する結果を得た。これらの結果は、本酵素の反応機構ならびに基質特異性を理解する上で重要な情報を与えた。さらに本酵素の発現系もほぼ確立でき、本酵素に関する研究も、今後さらなる進展が期待できる。
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