研究概要 |
大腸菌のロイシル-tRNA合成酵素がロイシンtRNAをいかに認識し、他アミノ酸種tRNAを識別している分子機構についてはすでに明らかにした(Asahara et al.,J.Mol.Biol.,231,219-229(1993))が、この結果の妥当性を異なる方法論、試験管内進化法(in vitro selection,SELEX)を用いて検証した。ロイシンtRNA遺伝子内のDループ、可変アーム、Tψループにランダムな配列を導入したDNAライブラリーを作成し、これを鋳型にして転写させたRNAプールをロイシル化した後、ナフトキシアセチル化したRNAを逆相HPLCで分離した。これらのRNAから逆転写-PCRで得られたDNAを鋳型にして、新しいライブラリーを作成した。このサイクルを繰り返し、ロイシル化されるRNAを分離し、その構造の決定とロイシル化活性の酵素反応速度論的解析をおこなった結果、2サイクル後のRNAライブラリーはDループ中のA15、G18、G19、A20A、可変アーム中のU48が良く保存されていた。可変アームにはステム・ループ構造が見られたが、塩基対の組み方は一様でなかった。3サイクル後のRNAライブラリーは、ロイシン受容活性の高いRNAの割合が増加し、Dループの配列は天然のロイシンtRNAに類似のものが多数を占め、先の我々の結論が正しいことを明らかにすることができ、これをまとめてJournal of Molecular Evolutionに発表した。
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