研究課題/領域番号 |
09680635
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
機能生物化学
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
長谷川 典巳 山形大学, 理学部, 教授 (60095023)
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研究分担者 |
朝原 治一 岐阜大学, 工学部, 助手 (90270438)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1999
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キーワード | tRNA identity / Discriminator base / Archaea / E. coli / T. thermophilus / tRNA^<Gly> / tRNA^<Thr> / Evolution |
研究概要 |
遺伝暗号の発現にかかわるtRNAは暗号とアミノ酸を直接結びつける鍵となる分子種である。細胞内に存在する数十種類のtRNA分子は、みな類似のクロバー葉二次構造、L字型三次元構造を有しているが、アミノアシルーtRNA合成酵素(ARS)はそれぞれに対応するtRNAとアミノ酸を厳密に認識し、アミノ酸を活性化している。このとき、ARSは同時に他のtRNAとアミノ酸を厳密に認識している。大腸菌の系では多くのアミノ酸種tRNAについては識別位塩基とアンチコドンの両方を主な認識部位としているが、トレオニンtRNAは認識位塩基は認識されていない。大腸菌以外のtRNAについては、ARSによる認識部位が解明された例は多いとは言えず、そのためARSによる認識部位の進化的な研究はあまり行われていない。そこで、tRNAアイデンティティーの進化について研究を行い考察した。 グリシルーtRNA合成酵素は大腸菌ではα_2β_2のサブユニット構成であり、高度好熱菌と酵母はα_2タイプのサブユニットからなり、認識の差異に注目した。グリシンtRNAはアクセプターステムの2番目の塩基対、アンチコドンの2文字目、3文字目は大腸菌、高度好熱菌、酵母共に共通の認識部位として保存されていた。識別位塩基はバクテリアではU73、酵母でA73と異なっているが、共に認識部位となっていた。その他にはバクテリアではアクセプターステムの1番目の塩基対が認識されていたのに対して、酵母ではアクセプターステムの3番目の塩基対が認識されている違いが見られたが、基本的には異なるサブユニットを持つ酵素系でも認識部位の共通性が見られた。 大腸菌のトレオニンtRNAの識別位塩基AはトレオニルーtRNA合成酵素(ThrRS)により認識されていない。古細菌のトレオニンtRNAは、知られている限りすべて識別粒塩基としてU(T)を持っている。そこで、好塩古細菌であるHaloferax volcanii、超好熱好気性古細菌であるAeropyrum pernixおよび大腸菌由来のThrRSを用いての各生物種由来のトレオニンtRNAのトレオニル化反応を検討した。その結果は、大腸菌ThrRSは古細菌、T.thermophilus、酵母いずれのトレオニンtRNAもトレオニル化した。ところがH.volcaniiおよびA.pernixThrRSは大腸菌と酵母のトレオニンtRNAを共にトレオニル化できなかったが、T.thermophilusのトレオニンtRNAをトレオニル化することができた。更に、大腸菌のトレオニンtRNAの識別位塩基AをG、C、Uに変換したin vitro転写物を用いて検討したところ、H.volcaniiのThrRSは、AをUに変換した変異体のみトレオニル化活性を示した。これらの結果は、古細菌ではトレオニンtRNAはThrRSにより識別位塩基が強く認識されており、生物進化の過程で認識機構が変化してきたことを強く示唆している。
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