研究概要 |
顆粒性好中球の分化生成機構を解析するため、好中球の分化に関与するヒト転写因子MZF-1に対応するマウスのcDNAを単離した。この因子はzinc finger domainを含むカルボキシル末端はヒトMZF-1と高い相同性を示すがアミノ末端が全く異り、これをMZF-2と名付けた。MZF-2の染色体遺伝子は5つのexonからなり、MZF-1とMZF-2は同一遺伝子領域の異なる転写開始点からの転写産物と推定された。MZF-2タンパク質のアミノ末端側には、ロイシン残基に富む領域(LeR domain)と酸性アミノ酸に富む領域が存在した。次に、これらのドメインの欠失変異型転写因子を作成し、それらの転写活性化能を検討した結果、転写活性化は造血系細胞株では見られたが、線維芽細胞株では見られなかった。さらに、MZF-2のアミノ末端の領域が自己の活性化ドメインと結合し転写活性化を自ら抑制していることが判明した。よって、好中球の分化過程においては活性化因子がMZF-2と相互作用し自己の不活化を解除し転写を活性化すると考えられた。 一方、リン酸化G-CSF受容体断片に結合するG-CSF刺激依存にリン酸化される数種のタンパク質を同定した。その1種を多量に精製し、そのアミノ酸配列を決定したところSHIPであった。そこで、G-CSF刺激依存にSHIPがチロシンリン酸化されG-CSF受容体と複合体を形成することを免疫沈降法を用いて実証した。 さらに、G-CSF刺激依存の細胞死の抑制に関与する遺伝子の発現を検討し、bcl-2遺伝子がG-CSF刺激後3時間後に発現することが判明した。また、第4番目のチロシン残基に変異を導入した受容体を発現する細胞ではbcl-2遺伝子の発現誘導が起こらなかったので、第4番目のチロシン残基が細胞死の抑制のシグナル伝達に関与すると考えられた。 さらに、G-CSF刺激依存できわめて初期に発現誘導がおこる遺伝子を検索し、α-D-mannosidase,および、macrophage inflammatory protein 1-αの遺伝子を同定した。
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