研究概要 |
(1)複眼原基特異的に機能するglass遺伝子のプロモーターに、酵母の転写因子Gal4の遺伝子を連結したP-エレメントプラスミドで、形質転換した遺伝子導入ハエ4系統を樹立した。このうち、X染色体に導入された系統(♯16)以外のものは、Gal4を高発現するだけで、複眼形態に異常をもたらすことがわかった。したがって、以後のGal4-UASシステムを用いた解析には、この♯16という系統を用いることにした。 (2)Gal4結合サイト(UAS)をもつプロモーターの下流に野性型DREFを連結し、遺伝子導入ハエ数系統を樹立した。また、Drosophila属の中で、melanogasterとは比較的遠い種であるvirilisからDREF遺伝子をクローン化した。決定した塩基配列にもとづいたアミノ配列を、両種のDREFで比較することにより、非常によく保存されている3つの領域CR1,CR2,CR3を同定した。これら、3つの領域をUASベクターにクローン化し、それらを用いた遺伝子導入ハエ数系統づつを樹立した。 (3)上記の♯16という系統を利用して野生型DREFを、複眼原基で過剰発現すると、複眼の形態に異常が見られた。ブロモデオキシウリジンラベル法で複眼原基細胞のDNA合成パターンを調べた結果、DREFの過剰発現が、本来細胞分裂が終了しているG0/G1期細胞に、異所的なDNA合成を誘導することがわかった。このことは、DREFがS期の誘導に必要十分な因子であることを示唆する。また、TUNEL法により、アポトーシスも異所的に誘導されることがわかった。これらの異所的なDNA合成とアポトーシスの誘導が、形態形成の異常をもたらしたと考えられる。また、DREFのCR1領域を過剰発現しても、複眼の形態異常が見られることがわかった。この場合は何が原因となっているのか、現在解析しつつある。
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