野性型DREFを、複眼原基で過剰発現すると、複眼原基細胞に異所的なDNA合成とアポトーシスを誘導し、複眼の形態に顕著な異常をもたらす。転写因子E2Fを複眼原基で過剰発現させても異所的なDNA合成を誘導することが報告されていることから、ショウジョウバエE2F遺伝子の変異系統を入手し、我々が樹立しているDREF過剰発現系統との遺伝学的交配実験を行った。交配によりE2F遺伝子のコピー数を半減させると、DREF過剰発現により誘導される複眼形態異常が顕著に抑圧されることから、DREF遺伝子はE2F遺伝子の遺伝学的に上位で機能していることがわかった。さらにこの結論を裏づけるため、ショウジョウバエE2F遺伝子をクローン化し、そのプロモーター領域を解析した結果、転写開始点より、500塩基対上流に3つのDRE様配列が連続して存在していることが明らかとなった。DREFはこれらのDRE様配列にin vitroで強く結合し、またこれらのDRE様配列は正の転写制御エレメントとして働きうることがわかった。これらの結果から、DREFは直接E2F遺伝子プロモーターを活性化しうることが明らかとなった。 また、DRBFのCR1領域およびCR3領域を過剰発現しても、複眼の形態異常が見られることがわかった。ブロモデオキシウリジンラベル法で複眼原基細胞のDNA合成パターンを調べると、これらの系統では野性型DREFを過剰発現している系統とは対照的に、複眼原基の形態形成溝通過後の同調的なS期への進行が阻害されていることがわかった。これは、CR1領域およびCR3領域がドミナントnegativeな働きで、内在性のDREFの機能を抑制したことによると思われる。
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