研究概要 |
複眼原基特異的に酵母の転写因子GAL4を発現する遺伝子導入ハエを樹立した。またGAL4結合サイト(UAS)をもつプロモーターの下流に野性型DREFcDNAを連結し、それを用いて遺伝子導入ハエを樹立した。一方、Drosophila属の中で、melanogasterと、virilis両種で進化的に非常によく保存されている3つの領域CR1(Conserved Region 1),CR2,CR3を同定し、これら3つの領域を含むcDNA断片をUASベクターにクローン化し、それらを用いた遺伝子導入ハエを樹立した。また、PCNA、DNAポリメラーゼαのcDNAを逆方向でGAL4結合サイトに連結し、これら複製関連因子のアンチセンスRNA発現用のコンストラクトも作成し、それらを用いた遺伝子導入ハエを樹立した。 上記の系統を利用して野性型DREFを、複眼原基で過剰発現すると、複眼の形態に顕著な異常が見られた。この形態形成の異常は異所的なDNA合成とアポトーシスの誘導によってもたらされる。転写因子E2Fを複眼原基で過剰発現させても異所的なDNA合成を誘導することが報告されていることから、ショウジョウバエE2F遺伝子の変異系統と、DREF過剰発現系統とを交配し、E2F遺伝子のコピー数を半減させると、複眼形態異常が顕著に抑圧されることから、DREF遺伝子はE2F遺伝子の遺伝学的に上位で機能していることがわかった。さらに、ショウジョウバエE2F遺伝子をクローン化し、そのプロモーター領域を解析した結果、転写開始点より、500塩基対上流に3つのDRE様配列が連続して存在していることが明らかとなった。DREFはこれらのDRE様配列にin vitroで強く結合し、またこれらのDRE様配列は正の転写制御エレメントとして働きうることがわかった。これらの結果から、DREFは直接E2F遺伝子プロモーターを活性化しうることが明らかとなった。 また、DREFのCR1領域およびCR3領域を過剰発現しても、複眼の形態異常が見られることがわかった。これらの系統では野性型DREFを過剰発現している系統とは対照的に、複眼原基の形態形成溝通過後の同調的なS期への進行が阻害されていることがわかった。これは、CRl領域およびCR3領域がドミナントnegativeな働きで、内在性のDREFの機能を抑制したことによると思われる。 一方、PCNAやDNAポリメラーゼαのアンチセンスRNAを複眼原基で発現させても、複眼の形態異常は認められなかった。
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