心血管系以外におけるアドレノメデュリンの産生と機能の解明

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09680641
• 研究機関: 国立循環器病センター
• 研究代表者: 南野 直人 国立循環器病センター研究所, 研究機器管理室, 室長 (50124839)
• 研究分担者: 片渕 剛 国立循環器病センター研究所, 研究機器管理室, 室員 (50300976)
• キーワード: アドレノメデュリン / 線維芽細胞 / 炎症 / マクロファージ / 腫瘍壊死因子 / インターロイキン6 / リポポリサッカライド / サイトカイン産生

研究概要

アドレノメデュリン(AM)は副腎髄質細胞腫より単離された血管弛緩性ペプチドで、血管内皮、平滑筋細胞も多量に産生し、血管の収縮・弛緩調節に関与する。昨年度までの研究で、血管系細胞での産生調節を明らかにするとともに、間質系細胞の線維芽細胞や、血球系の単球-マクロファージ系細胞においてもAMが活発に産生されることを示した。
本年度は、AMの心血管系以外での機能を明らかにするため、サイトカインなどの産生を中心に検討を進めた。マウス胎児由来のSwiss 3T3細胞はAM特異的な受容体を発現し、AMにより細胞内cAMP-PKAを介して増殖促進効果を発揮することがわかった。次に代表的なサイトカインとして、インターロイキン6(IL-6)産生への影響を調べたところ、AM単独でもIL-6産生を約5.5倍に増加するが、TNF、IL-1、LPSで増加したIL-6産生をAMはさらに相乗的に増加し、特にTNFとの同時刺激によって基礎分泌量の270倍までIL-6産生を増加することが示された。AMのIL-6産生誘導反応は極めて迅速で、TNF共存下では30分後にほぼ最大となり、4時間以降は基礎値に戻ることが確認され、炎症メディエーターとして機能することが明らかとなった。
一方、単球-マクロファージ系細胞のRAW264.7細胞で、AMはTNF-α産生を約60%増加したが、LPS刺激で数百倍に増加したTNF-α産生を逆に最大で40%抑制した。また、LPS刺激で増加したIL-6産生を、AMは約20%抑制したが、IL-1β産生には変動を与えなかった。
以上の結果、AMは心血管系以外の線維芽細胞や単球-マクロファージ系細胞でも産生され、サイトカイン産生調節因子として機能していることが確認されたため、より広範な細胞、組織についてAMの産生や機能を検討することが必要となった。

研究成果

• [文献書誌] Y.Hattori: "Glucocorticoid regulation of adrenomedullin in a rat model of endotoxin shock." Life Sci.62. PL181-PL189 (1998)
• [文献書誌] Y.Isumi: "Regulation of adrenomedullin production in rat endothelial cells." Endocrinology. 139. 838-846 (1998)
• [文献書誌] A.Kubo: "Measurement of plasma and urinary adrenomedullin in patients with IgA nephropathy." Nephron. 78. 389-394 (1998)
• [文献書誌] Y.Isumi: "Adrenomedullin stimulates interleukin-6 production in Swiss 3T3 cells." Biochem.Biophys.Res.Commun.244. 325-331 (1998)
• [文献書誌] A.Kubo: "Production of adrenomedullin in macrophage cell line and peritoneal macrophage." J.Biol.Chem.273. 16730-16738 (1998)
• [文献書誌] N.Shinoki: "Shear stress down-regulates gene transcription and production of adrenomedullin in human aortic endothelial cell." J.Cell.Biochem.71. 109-115 (1998)
• [文献書誌] 南野直人: "アドレノメデュリン:血管壁細胞で産生、機能する循環調節ペプチド" 実験医学, 7 (1998)
• [文献書誌] 南野直人: "循環調節ペプチド:血管系細胞が産生する血管機能調節因子としての位置づけ" 循環制御, 8 (1998)