研究概要 |
(1)Na^+/H^+交換輸送体(NHE1)の活性調節におけるCa^<2+>の役割を研究するため、強力なCa^<2+>排出タンパク質NCX1をCCL39繊維芽細胞に過剰発現し、静止時および増殖因子刺激時の細胞内Ca^<2+>濃度が著明に低く抑えられる細胞を作成した。コントロールおよび上述したNCX1高発現細胞を用いて、様々な刺激によるこの細胞のNHE1活性化を検討したところ、a)細胞内Ca^<2+>の関与は刺激の種類によって異なり、トロンビン>PDGF>>PMA及び高浸透圧刺激の順であり、b)トロンビンによるNHE1活性化は、Ca^<2+>とPKCを介してNHE1の異なるドメインに依存して調節される、c)トロンビン刺激した場合、見かけのCa^<2+>動員が一過性であるにも関わらず、カルモデュリン結合によるNHE1活性化は長時間持続することを示唆するデータが得られた。 (2)CCL39等の繊維芽細胞、骨格筋細胞(L6)において、外液Na^+をNHE1の基質となるLi^+で置換するとpH_iが上昇することが見いだされた。このpH_i上昇は、choline^+による置換やNHE1阻害剤(EIPA)存在下ではおこらず、また、NHE欠損株(PS120)ではおこらないことから、NHE1の活性化によると結論された。Na^+→Li^+置換によってCa^<2+>動員、PI代謝亢進は起こらない。また、Na^+→Li^+置換によるpH_iの上昇は、Gタンパク質(G_i,G_o)阻害剤IAP,MEK阻害剤PD98059,PI3Kinase阻害剤LY294002によって阻害されず、PMA処理によりPKCを枯渇させてもほとんど阻害されないが、比較的低濃度のチロシンリン酸化阻害剤genisteinによって著明に抑制された。これらの結果は、細胞外に添加したイオンからNHE1活性化に至る新しいタイプの細胞内情報伝達機構が存在する可能性を示唆する。
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