リカバリンのN末端は脂肪酸(主にミリストイル酸)で修飾されており、この疎水性部分を利用してカルシウム依存的に細胞膜と相互作用する(カルシウム-ミリストイルスイッチ)。本研究では、リカバリンファミリーに属する蛋白質の詳細なNMR構造解析を行い、このスイッチ機構を原子レベルで理解することを目的とする。 1.カルシウム非存在下のリカバリンの三次元構造の精密化 既にカルシウム非存在下の構造を決定し、ミリストイル基がN末端ドメインにある深い疎水性ポケットに格納され、細胞膜との相互作用に寄与出来ないことを明らかにしていたが、今回その構造の精密化を行い、ミリストイルポケットの詳細な構造を決めた。 2.カルシウム存在下のリカバリンの構造解析 カルシウムを結合したリカバリンの構造決定に成功し、ミリストイル基がカルシウムの結合と連動して飛び出すことを明らかにした。リカバリンでは、EF-1とEF-2からなるN末端ドメインと、EF-3とEF-4からなるC末端ドメインがコンパクトにパッキングしている。このドメインインターフェースを形成しているEF-2とEF-3にカルシウムが結合すると、それらのヘリックス間の相対位置が変化し、結果的に2つのドメインがインターフェースを中心に約45度ねじれることが明らかになった。この構造変化によりミリストイル基が蛋白質表面に露出する。また、N末端ドメインの構造は大きく変化し、蛋白質表面に疎水性クレバスが形成される。 3.カルシウム非存在下のニューロカルシンの構造解析 効率良い発現・大量産生系を用いて安定同位体ラベルされたニューロカルシンを調製し、カルシウム非存在下で一連の異種核三次元NMRスペクトルを測定した。現在、約90%の主鎖の帰属が終了している。
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