研究概要 |
1. レセプター刺激に伴うG蛋白質αサブユニットの二次構造変化: レセプターと同様にG蛋白質を活性化できるマストパランとcompound48/80は何れもGi1αのαヘリックス含量を減少させた。また、活性化のEC50と二次構造変化のEC50は何れも30μg/mlと等しかった。そこで、レセプター刺激によってαサブユニットのαヘリックス含量が減少し、その構造変化がGDP解離を促進している事がわかった。 2. Gi1α突然変異体の活性化とグアニンヌクレオチド結合特性: αサブユニットのレセプター結合部位にあるα5ヘリックス中の2つのアスパラギン酸(D337,D341)はβ2-β3ループに存在するリジン(Kl92)とイオンペアを形成しており、β2ストランドの先にはグアニン結合部位が存在する。そこで「レセプター刺激によってα5ヘリックスのほぐれが起り、その結果GDPの解離が促進される」と考えられる。この2つのアスパラギン酸をアラニンに置換した突然変異体はcompound48/80によってαヘリックス含量は減少したが、GDP解離の促進は起こらなかった。また、m2ムスカリンレセプターによる活性化の程度は低かった。これらの現象は上記の仮説を裏付けている。さらに、K192・D337・D341のそれぞれをアラニンに置換した突然変異体を調製しそのGDP特性を調べたところ、いずれもGDPの解離速度がwild typeに比べて速かった。そこで、イオンペアはGDPのαサブユニットへの安定な結合に重要であることがわかった。 3. G蛋白質βγサブユニットの効率的な精製法の確立: βγサブユニットの精製には従来多種類のクロマトグラフィーを組合せる必要があり、時間と労力がかかった。Gi1αをリガンドとするアフィニティークロマトグラフィーの条件を検討することによって、1ステップでβγを精製する方法を確立した。
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