G蛋白質を介した情報伝達の機構を解明するために、G蛋白質とレセプターとの相互作用を生化学的・物理化学的に解析し、以下の成果が得られた。 1. Gilαに結合したマストパランXの構造:安定同位体で一様にラベルしたペプチドを簡単に調製できるユビキチン融合蛋白質発現系を構築した。^<15>Nと^<13>Cで一様にラベルしたマストパランXとGilαとの相互作用をTRNOEで解析することによって、主鎖のrmsdが0.33Åという非常に精密な構造が得られた。 2. G蛋白質βγサブユニットの新しい精製法:Gilαをリガンドとする新しいアフィニティークロマトグラフィーを考案し、牛脳βγサブユニットをたった1ステップで精製できるようにした。 3. レセプターミメティックによるGilαの構造変化:リガンドの結合したレセプターがG蛋白質αサブユニットからのGDPの解離を促進するメカニズムを解明するために、レセプターミメティックによるαサブユニットの二次構造変化をCDで解析した。活性化と対応してGilαのへリックス含量が低下することがわかった。 4. レセプターがGilαを活性化するメカニズム:Gilαのアミノ酸配列の二次構造予測からレセプターミメティック刺激によってレセプター結合領域にあるα5ヘリックスがほどけていることが示唆された。α5ヘリックスは良く保存されているAspとLysによって形成されるイオンペアを介してβ2/β3ループと結合しており、β2ストランドのN末端側にはグアニン結合領域があるので、α5ヘリックスの構造変化はそのイオンペアを経由してGDP結合部位に構造変化を誘起してGDPの解離を促進していることが示唆される。実際に、イオンペアを形成できないmutantはm2ムスカリンレセプターによってあまり活性化されなかった。また、イオンペアはGDPのαサブユニットへの強固な結合に重要であることがわかった。
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