研究概要 |
主に,網膜の視細胞膜の可溶化における相分離現象や膜蛋白質に対する選択性と,界面活性剤の相分離性との関連について詳細に研究を行った。また,その膜の構成成分として知られているリン脂質を用いたモデル系に対する界面活性剤の作用を比較対象とした。その結果,生体膜画分を含むような複雑な系においても,観察される相分離現象は,主としてその構成脂質と界面活性剤との相互作用により規定されていることが示唆された。具体的には,生体膜とモデル系の双方について,酸性リン脂質と2価カチオンの含量に依存した,相分離の生成・消滅が同様にみられることが明らかになった。このような知見は,アルキル-単糖型の界面活性剤が,一定の比率で脂質と混合することにより顕著な相分離を示すという新しい発見を利用することにより前らかになったものである。一方,副次的な研究成果として,視細胞内の光受容膜蛋白質であるロドプシンの選択的可溶化条件の改善により,様々な3次元結晶がこれまでに得られている。アルキル-単糖型の界面活性剤を2価カチオンの存在下で用いることが,ロドプシンの可溶化に有効であることは,既に本研究開始前に明らかになっていた。今回さらに,その可溶化の際にIIB族の2価カチオンを用いることにより,極めて選択的にロドプシンのみが膜画分から抽出されるということ,また3次元結晶化にも有効であることなどがわかった。既に,比較的安定な結晶からは,可視光により消滅するX線回折が得られているが,これはG蛋白質共役型受容体としては初めてのものであると考えられる。
|