研究概要 |
脊椎動物網膜の視細胞膜の可溶化における相分離現象や膜蛋白質に対する選択性に関して,実用的な側面について詳細に研究を行った.具体的には,膜蛋白質溶液の相分離状態を制御する,添加剤の効果や,可溶化段階における添加剤のミセル形成過程への関与等が明らかとなった.その結果,実用的な,高度に選択的な可溶化法の完成・及びそのメカニズムの考察に基づく一般化の方向性を確立するに到った.これは,脂質二重膜間相互作用が極めて強くなる溶媒条件下での,Lα-HII等の脂質の相転移を想定した,最小界面活性剤量での選択的可溶化,と言うことが出来る.一般的に,逆錐形状を持つ脂質の含量がある程度の割合を占めるような生体膜画分の場合,視細胞系に関して得られた詳細な研究結果をもとにして,今後のA研究を更に発展させることが可能と思われる.一方,前年度の副次的な研究成果として得られた,視細胞内の光受容膜蛋白質であるロドプシンの3次元結晶化の条件を更に改善し,2つの結晶形(双ピラミッド状,四角棒状)について,大型放射光施設(Photon Factory,SPring-8)でのクライオX線回折測定を行った.特に,四角棒状結晶については,結晶の長軸方向には,5Å分解能を超える反射が確認された.また,単位格子中のロドプシン分子の数,配向等に関する情報が得られた.今後,更に抗凍結剤の条件等を改善することにより,より高分解能のデータ収集・構造解析が行える可能性があると考えられる.
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