1. 膜融合は生物として必須の過程であり、それぞれの過程固有のタンパク質が司っているが、ある種のペプチドはこの過程を誘起することが出来、モデル系を研究することが出来る.膜擾乱活性を持つペブチドは膜の中でα-ヘリックスを作り膜構造の擾乱が起こるが、ヘリックス形成は必要条件ではあっても十分条件ではなく、ペプチドが膜融合を誘起するにはその後どのような過程によるか判っていない.活性発現条件においてもペプチドの膜内配向は不活性状態とほぼ同様であることが以前の研究から判っているので、残る可能性の一つとして膜内でのペプチド間会合状態の変化が膜擾乱を誘起しているのではないかと推測された. 2. しかし膜内での分子会合を検出する一般的方法はなく、これを蛍光のエネルギー移動を用いて研究することを試みた.今まで蛍光官能基としては嵩高く、且つ極めて疎水性の高い発色団が導入されていたが、これはペプチドそのものの構造を乱す可能性が大きいので、出来るだけ本来のアミノ酸に近いものを考え、7-アザトリプトファンと3-ニトロチロシンを選んだ.前者はしかし残念ながら光学活性体を得ることが困難で、後者をエネルギー受容体、トリプトファンをエネルギー供与体とする系を選び、これらを含む活性ペプチドアナログを合成して、分子間会合を調べた.この系で分子のコンホメーション変化や、会合が検出できることが明らかになったが、膜中でのペプチドの会合状態は活性、不活性条件ともほとんど変化がないことが結論され、膜融合に至る膜構造の擾乱は極めてデリケートな過程であることが推測されるに至った. 3. 生体膜とタンパク質の相互作用に関する文献データベースを以前から作り始めていたが、現在約3000文献を集めたものが出来た.
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