P450・電子供与体複合体の結晶化と電子伝達機構の構造的解析

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09680651
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 堀 洋 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 助手 (20127294)
• キーワード: シトクロムP450cam / 基質 / 電子供与体 / 電子伝達機構 / X線結晶構造解析 / EPR / 電子・核二重共鳴(ENDOR) / プチダレドキシン

研究概要

還元型プチダレドキシン(Pdx)と還元型P450camとの複合体でP450camの還元型ヘム鉄に02、CO、NOが結合すると還元型PdxのEPRスペクトルが有意に変化する事を見い出し、既に報告してきた。
Pdx.5-P450camとの複合体形成に於ける協同的構造変化によって引き起こされたPdx複核中心の電子状態の変化をさらに詳細に解析するため、複核中心の不対電子と相互作用をするプロトン核由来の電子・核二重共鳴(ENDOR)測定を10Kでおこなった。単離した還元型PdxのENDORスペクトルは既に報告されているが、還元型P450camと複合体を形成するとENDORスペクトルが顕著に変化することを初めて見い出した。複合体形成、P450camへの配位子結合に伴うPdxの構造変化が複核中心の不対電子とシステイン残基のプロトン核との相互作用を大きく変化させると期待したが、ENDORシグナルの本数、超微細構分裂幅に大きな差異は認められなかった。しかし、シグナルの強度のみが有意に変化した事は不対電子と相互作用するプロトン核の個数が変化した事を意味する。一方、P450cam-プチダレドキシン複合体のX線結晶構造解析は不可欠である。昨年度に引き続き本年度も複合体の結晶化を精力的に行った。現在、複合体の結晶化には成功していない。複合体にはならなかったが、既に報告されているP450camと晶系の異なるP450cam単体の結晶による構造解析を行った。結晶化法の違いにより分子構造に有為な差異があることが判った。P450cam-Pdx複合体の結晶化を積極的に進め、X線結晶構造解析から協同的構造変化、電子伝達の道筋を構造面から解明する事を目指す。

研究成果

• [文献書誌] Tatsushi Mogi: "Substitutions of Conserved Aromatic Amino Acid Residues in Subunit I Perturb the Metal Centers of the Escherichia coli bo-type Ubiquinol Oxidase" Biochemistry. 37. 1632-1639 (1998)
• [文献書誌] Atsushi Morimoto: "Detection of a Tryptophan Radical as an Intermediate Species in the Reaction of Horseradish Peroxidase Mutant(Phe221→Trp)with Hydrogen Peroxide" J.Biol.Chem. 273. 14753-14760 (1998)
• [文献書誌] Tatsushi Mogi: "Two Terminal Quinol Oxidase Families in Escherichia coli:Variations on Molecular Machinery for Dioxygen Reduction" J.Biochem.Mol.Biol.& Biophys.2. 79-110 (1998)
• [文献書誌] Masaya Suzuki: "Synthesis and Characterization of Mixed μ-Alkoxo-diiron(II,III)Complexes with an Unsymmetric Dinucleating Ligand" Inorg.Chim.Acta. 283. 124-135 (1998)
• [文献書誌] Ryu Makino: "EPR Characterization of Axial Bond in Metal Center of Native and Cobalt-substituted Guanylate Cyclase" J.Biol.Chem.(印刷中). (1999)
• [文献書誌] Hideo Shimada: "Putidaredoxin-Cytochrome P450cam Interaction:Spin State of the Heme Iron Modulates Putidaredoxin Structure" J.Biol.Chem. (印刷中). (1999)