CD45とLAR(LCA Related protein)は他のほとんどの膜型チロシンホスファターゼ(P-TP)と同じく2つのPTPドメインを持っている。これらの膜型PTPについて、2つのドメインの基質に対する機能を調べた。 CD45とLARのN末側のPTPドメイン(D1)のシステインをセリンに置換した変異体、CD45D1CS.LARD1CSはホスファターゼ活性を持たない。それぞれの変異体をCOS細胞で発現させて、CD45D1CSがリン酸化CD3ζと、LARD1CSがリン酸化インスリンレセプター(IR)とそれぞれ安定に結合する事を見いだした。また野生型のLARがIRを選択的に脱リン酸化した。このことからCD3ζがCD45の、IRがLARの生理的基質であると考えられる。CD3ζの7つのチロシン残基のうち5つをフェニルアラニンに置換した3種類の変異体とCD45D1CSを用いて、CD45の基質特異性を検討したがこれらとの結合性に明らかな差はなかった。一方、ShcのSH2ドメインはC末から2番目のチロシンを欠く変異体に全くCD3ζに結合性を示さずこのリン酸化チロシン残基に結合すると考えられた。 C末側のPTPドメイン(D2)のシステインもセリンに置換した変異体CD45D1D2CSではCD3ζへの結合性はCD45D1CSに比べて低いこと。同じくLARD1D2CSでは、インスリンレセプターとの結合は弱いことから、CD45とLARともD2は基質に対してリン酸非依存的結合し、その結合にシステイン残基が重要であることが判明した。 また、LARD1D2CSはLARD1CSに比べリン酸化が亢進しており、D2部分に自己脱リン酸化能があることが示唆された。
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