研究概要 |
蛍光性GTPアナログを用いた、G蛋白質の活性化の実時間測定 昨年度の研究結果、蛍光標識されたGTP(mantGTP)を用いて、G蛋白質の活性化(GTPの結合)を実時間で測定できるようになった。しかしG蛋白質は水解反応より生じたmantGDPと極めて親和性が低く、観測される蛍光変化は、GTPの結合による蛍光増加と、その後のGDPの解離による蛍光減少とが重なったものになる。それ故、この測定ではロドプシンによるG蛋白質のGTP交換反応を速度論的に解析することは難しい。そこで、非水解性mantGTPγSの合成することにした。平塚らの論文を参考にして、当研究室において合成精製する系を確立した。合成したmantGTPγSを用いて、光刺激後ウシロドプシンによるトランスジューシンの活性化を測定した。その結果mantGTPの場合と異なり、GTP結合反応のみを反映した蛍光変化が得られた。両蛍光性GTPアナログ(mantGTP,mantGTPγS)を用いることで、GTPの結合反応及びGTP水解反応の速度論的解析が出来ると期待される。 ミリ秒領域でのタコロドブシンのC末部の構造変化 タコ口ドプシンは、マイクロ秒の時間帯で可視部の吸収変化が完了するため、その変化が光化学反応の最終過程と考えられていた。幾つかの実験的証拠から可視吸収変化終了後ミリ秒の時間帯で蛋白質部に構造変化が生じていることが示唆されてきたが、実際にどの部位で構造変化が生じているか分からなかった。タコロドプシンのC末部のシステイン残基(Cys345)を特異的に蛍光標識したロドプシン用いて、昨年度開発した高感度高速蛍光測定装置でミリ秒領域の時間帯でのロドプシンのC末部の構造変化について調べた。その結果、約1ミリ秒の時定数でC末部位の構造変化が起きていることが分かった。このC末部の構造変化がG蛋白質との相互作用に関与していると思われる。
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