研究概要 |
当研究は,HIV-2のヌクレオキャプシドタンパク質(NCp8:zinc finger motif(ZFM)を2つ含む49アミノ酸残基のペプチド)を対象とし,その構造とウイルスRNA認識機構の関係を解明することを目的としている.2つのZFMはlinker領域と呼ばれる塩基性アミノ酸残基に富む7残基のアミノ酸でつながれている。この点を含めてNCp8はHIV-1のヌクレオキャプシドタンパク質(NCp7)と一次配列上の相同性が高い。また、両方のヌクレオキャプシドタンパク質(NC)のlinker領域は活性発現に必須であることが報告されている。本年度は主にNCp8の部分ペプチド(NCp8-f1)の構造活性相関の解明を行った。 NCp8-f1はN端側のzinc finger motif(ZFM)とlinker領域を含む29アミノ酸残基のペプチドである。この部分はNCp8の活性発現に必要な最小単位である。昨年度NCp8-f1の立体構造を大まかに決定した。これに引き続き本年度は亜鉛配位の距離制限情報と二次元NMR(NOESY)から得られた近接水素核間距離制限情報(343個)、主鎖の2面角(10個)の情報を元にディスタンスジオメトリー法を用いてより精度の高い構造解析を行った。その結果、linker領域がNCp7では観測されていない立体構造を持っていること。さらに、その構造が1つのZFMでNCp8およびNCp7と同様の活性を発現するNCp10(Moloney murine leukemia virusのNC)の活性発現部位の構造と良く似ていることがわかった。現在、NCp8-f1の構造機能相関についてNCp7およびNCp10と比較して議論し、その内容を中心とした論文を作成中である。 その他の成果:C端側のZFMを含む27アミノ酸残基のペプチド(NCp8-f2:上記のbasic regionをN端側に持つ)を合成した.これに関しても2次元NMR測定結果を解析し,既に主鎖の水素核の帰属を完了した.また,今後RNAとの結合時の構造を求めるために窒素核を安定同位体標識したNCp8の大量調製が必要である.本年度はNCp8をコードするDNAを大腸菌の発現ベクターに組み込むことを終了した.
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