研究概要 |
タンパク質など生体分子の原子間力顕微鏡(AFM)観察には多くの困難がつきまとう。タンパク質は柔らかく,かつ基板への固定が難しいことがその主原因である。本研究では収束電子線を用いて作製した先鋭なカーボンティップ(スーパーティップ)を使用し,タンパク質2次元配列および単一分子の高分解能イメージング法を開発する。 水中AFMでは,キャピラリ力の消失により表面摩擦が減少し,像分解能の向上が期待できる。気水界面を利用してタンパク質の2次元結晶(集合体)を作成し,シリコンウエハに転写した。今年度は主として,水中スキャナおよびスーパーティップを使って,コンタクトモードでの水中AFMイメージングを試みた。 スーパーティップAFMにより,フェリチンおよびカタラーゼの2次元結晶を水中で高分解能イメージングできた。大気中の像と比べて明らかに高分解能であり,配列と分子形状を明瞭に認識できた。水中イメージングにおいてもスーパーテイップが有効であることを確認した。スーパーティップ作製条件についても検討し,作製時に発生するカンチレバ-の反りを防ぐ方法を見いだした。 スーパーティップAFMにより,水溶性タンパク質2次元配列の水中イメージングの可能性が明らかとなったが,AFMを実際のタンパク質研究で使うには,単一分子のイメージングが重要と考えられる。そこで,タンパク質2次元配列に対して,タッピングモード水中イメージングの試みを開始した。今のところ,コンタクトモードに比べると分解能ははるかに低いが,走査パラメタなどの検討により今後改善したい。
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