アクチンおよびミオシン分子場の一分子計測

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09680658
• 研究機関: 東京理科大学
• 研究代表者: 山田 武範 東京理科大学, 理学部, 教授 (50027330)
• キーワード: 生物分子モーター / アクチン / ミオシン / クロスブリッジ / 原始間力顕微鏡 / 分子場 / ミオフィブリル

研究概要

ミオシン頭がアクチンフィラメントの上を滑る分子機構として、ラチェットモデルなるものが最近提唱されている。本研究では、このモデルの検証に必要な筋フィラメントに沿った分子場を分子計測した。実験対象として、まず骨格筋の収縮単位であるミオフィブリルを選んび、うさぎ骨格筋から調整した単一ミオフィブリルについて、その収縮性を調べた。その結果は、生物物理学会、生理学会などで発表、最終的に日本生化学会誌に論文として発表した(Yuri,Wakayama,Yamada,1998)。ついで、ガラス基盤の表面に固定したミオフィブリルの上に、原子間力顕微鏡のカンチレバー先端を接触させ、そのたわみを計測することによって、ミオフィブリル中の筋節の分子場を実験的に測定した。その結果、筋節中でZ膜が一番固く、アクチン-とミオシンの重なり部分では一定の固さを保つことが分かった。これより、アクチン-ミオシン重なり部分の繊維に横方向のヤング率を求めた。この結果は、生物物理学会や、生理学会、物理学会などで発表、また論文としてまとめられ、現在印刷中である(Yoshikawa,Yasuike,Yagi,Yamada,印刷中)。一方、一本のミオフィブリルについて微小力学測定が出来るようになり、その軸方向のヤング率を計測した。これから、筋線維中の一本のクロスブリッジの弾性定数を見積もることが出来ることが分かり、米国生物物理学会で発表した。原子間力顕微鏡のカンチレバー先端を、ガラス表面に固定したアクチンフィラメントの表面に沿って走査して分子場を計測した結果、フィラメント軸に沿って異方的な信号がえられた。現在、この実験結果を詳細に検討している。

研究成果

• [文献書誌] 吉川,若山,山田: "骨格筋単一筋原繊維の長軸および短軸方向の弾性." 生物物理. 38. S68 (1998)
• [文献書誌] Yuri,K., Wakayama,J. and Yamada,T.: "Isometric contractile properties of single myofibrils of rabbit skeletal muscle." Journal of Biochemistry. 124. 565-571 (1998)
• [文献書誌] Wakayama,J. and Yamada,T.: "Contractile properties of single skeletal myofibrils." Japanese Journal of Physiology. 48. S93 (1998)
• [文献書誌] Yamada,T., Yoshikawa,Y., and Wakayama,J.: "Longitudinal and transverse stiffness of single myofibrils of rabbit skeletal muscle in various physiological states." Biophysical Journal. 76. A160 (1999)
• [文献書誌] Yoshikawa,Y., Yasuike,T., Yagi,A. and Yamada,T.: "Transverse elasticity of myofibrils of rabbit skeletal muscle studied by atomic force microscopy." Biochemical and Biophysical Research Communications. in press.
• [文献書誌] Yoshikawa,Y., Wakayama,J., and Yamada,T.: "Axial and radial elasticity of single myofibrils of rabbit psoas muscle." Journal of Muscle Research and Cell Motility. in press.