研究概要 |
ミオシン頭がアクチンフィラメント上を滑る分子機構として、ラチェットモデルなるものが最近提唱されている。このモデルではアクチンフィラメント軸に沿って異方的な表面分子場があり、その上をミオシン頭が熱揺動によって動くとされている。本研究では、筋フィラメントにこの異方的な分子場があるかどうかを分子計測により検討することを目的とした。実験対象として、まず骨格筋の収縮単位である単一ミオフィブリルについて、その収縮性を調べた。その結果は、生物物理学会、生理学会などで発表、最終的に日本生化学会誌に論文として発表した(Yuriet al.,1998)。さらに、ミオフィブリルが収縮中の力発生を調べ、これは論文投稿中である。ついで、ミオフィブリル中の筋節の表面分子場を実験的に測定した、このためガラス基盤の表面に固定してミオフィブリルに、原子間力顕微鏡のカンチレバー先端を押し付けて、そのたわみを計測することによって調べた。これより、アクチン-ミオシン重なり部分の線維に横方向のヤング率を求めた、この結果は、日本生物物理学会や米国生物物理学会、生理学会、物理学会などで発表、またBiochem.Biphys. Res. Comm.誌に発表した(Yoshikawa et. al, 1999)。さらに、これを発展させ、ミオフィブリルの縦方向と横方向のヤング率より、一個のクロフブリッジについての縦方向と横方向の弾性率を求め、それに構造の異方性があることを見つけた。これについては論文投稿予定である。一方原子間力顕微鏡のカンチレバー先端にZnOウイスカーを接着したものを開発して、これをガラス表面に固定してアクチンミオシンフィラメントの表面に沿って走査して、そのたわみ信号から表面分子場を計測した。一方、光るピンセットを使って二個のビーズの間に一本のアクチンフィラメントを張り、これに沿ってミオシンをコートしたビーズを滑らせた。この時の、ビーズの運動を解析してアクチンミオシン分子場の異方性の特長を検討した。以上のいくつかの実験結果は、筋フィラメントに沿って、その表面分子場の異方性があることを示している。今後、この分子場の異方性の内部構造をさらに詳しく検討することにより筋萎縮分子機構が明らかにできると期待される。
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