研究概要 |
膜タンパク質の構造と機能の研究が活発に展開されていが、それらの膜中での会合様式の要因は未だはっきりしていない。そこで、我々はまずα-へリックスについて膜中の会合要因を定量的に調べる事とした。膜タンパク質の膜貫通部分の会合要因としては、脂質-膜貫通セグメント間の特異的相互作用、及びα-へリックス貫通ペプチド間の水素結合、静電結合、双極子-双極子相互作用等が考えられる。そこで、今研究の2年間にわたって、一回膜貫通型のα-へリックスモデルペプチドを基に、色々な相互因子を導入してそれらを定性、定量的に評価した。 モデルペプチドとしては、その膜との結合状態がよく調べられているP24を用い、これをホストとして種々の側鎖をもった以下の4種類の置換アナローグをデザインした。 Ac-Lys2-Gly-Leu24-Lys2-Ala-NH2〓P24 Ac-Lys12-Gly-Leu9TrpLeu2-Glu-Leu11-Lys2-Ala-NH2〓P24-EW Ac-Lys12-Gly-Leu9-Xxx-Leu2-Lys-Leu11-Lys2-Ala-NH2〓P24K-Xxx Ac-Lys12-Gly-Leu9TrpLeu14-Lys2-Ala-NH2〓P24-W Ac-Lys12-Gly-Leu9-Xxx-Leu14-Lys2-Ala-NH2〓P24-X 蛍光性アミノ酸XxxとしてTyr(Trpのindole基間のエネルギー移動がよく研究されている),及びpyrene含有アミノ酸Pya(pyrenyl-L-alanine)(蛍光強度が強く、蛍光寿命が長く、会合するとエキシマー発光を示す)を用いた。初年度は、全てのペプチドが固相自動合成と逆相高速液体クロマトグラフィーで、適当な収量で合成された。今年度はそれを用いて、CDを用いてDPPC,DPPGなどの脂質二分子膜の存在下でのペプチドのconformationを調べたところ、全てが期待したとおりα-へリックス構造を取っていた。又P24-W、P24-Pya間に強いエネルギー移動が観察された。また静電相互作用を評価するためP24-EW、P24K-Pyaの間にエネルギー移動効率を測定したところ、P24-W、P24-Pya間に観測されたエネルギー移動のそれとの間に顕著な差は、みられなかった。このことは、脂質存在下での両ペプチド間の相互作用は、静電相互作用などに関係なく存在し、このことは、脂質二分子膜中では膜貫通型のα-へリックス構造は相分離を起こして自発的に強く会合することを意味する。
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