研究概要 |
PhoB蛋白質全体の結晶化を目的として,本年度は蛋白質の大量発現および精製法の検討を行い,良好な結果が得られたので,結晶化条件の探索を開始した. 大量発現法の検討:T7プロモーターを使った発現系を使って大腸菌にPhoB蛋白質を産生させた場合,IPTG誘導による大量発現に失敗する場合が多かった.これは目的蛋白質の細胞毒性により発現細胞が失われるためと考えられる.そこでむしろIPTG誘導によらず目的蛋白質を発現しているリ-キ-な細胞を選んで用いることにより,適当なレベル(約10mg/l)の発現を得ることができた. 精製法の検討:主に従来のオープンカラムによる精製をFPLCカラムに替えかつ分離法も改変することで,迅速に高純度の蛋白質を得られるようにした.骨子は次の通りである.(1)細胞粉砕後の可溶性分画にプロタミン硫酸を加え凝集した核酸を遠心分離により除く.(2)上清をヘパリンアフィニティカラムにのせ0.05〜0.5MのNaCl濃度勾配をかける.PhoB蛋白質は0.24MNaCl付近で溶出した.(3)SP陽イオン交換カラムにのせてpH5.7〜7.0のpH勾配により溶出する.PhoB蛋白質はpH6.3付近で溶出した.この方法は得られる純度の点で従来のイオン強度勾配による方法より勝っていた.(4)Superdex75カラムによりゲル濾過をおこなう. 結晶化条件の探索:現在まで,PEG6000,NaCl,リン酸,もしくは硫安を沈殿剤とした透析法によるグリッドスクリーニングと,市販のキットを用いたランダムマトリクススクリーニングとを試みたが,有望な結果は得られていない.生成物がある場合はほとんど不定形の沈殿となるので,リン酸化されていない単量体状態の蛋白質は凝集性が比較的高いのかもしれない.このためリン酸化により二量体を形成した蛋白質についての実験を試みている.
|