1998年Kチャネルの結晶構造がMacKinnonらのグループによって決定した。本研究は次のような目的意識で行った。決定された立体構造から予想される機能とは直感的に結びつかない新たな現象を見出し、その機構をキネティクスや静電気学的に解析する。このような現象から得られる動的なチャネル像を静的な立体構造を対応づけ、新たなチャネル像を構築する。 "内向き整流性"Kチャネルのうち2回膜貫通型のIRK(Kir2.1)と6回膜貫通型のKAT1を対象に実験を行った。両者はポア近傍の構造に関して相同であると考えられている。IRKチャネルの細胞外Mg^<2+>による効果を明らかにするために、表面電荷を正確に評価する方法を開発した。この方法によってMg^<2+>とCa^<2+>の差がチャネル表面への結合の強さによるものであって、一旦結合したときに表面電位への効果は同等であることが明らかになった。さらにMg^<2+>は表面電荷だけでなく開チャネルブロッッカーとして働くことを明らかにした。単一チャネルキネティクス解析から開チャネルブロッキングによってゲートが影響を受けることを見出した。この現象は従来考えられているゲートの局在では説明が困難である。今後いくつかの可能性を検討していく必要がある。 一方、KAT1チャネルはイオン選択性機構を修飾する変異型について検討していたが、偶然にもゲート特性が変化していることを見出した。ポアへリックスという透過イオンに接触することのない位置への変異(T256)で活性化過程の速度が変化した。キネティクス解析の結果、閉状態から開状態への遷移速度が大きく変化することが明らかになった。
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