研究概要 |
転写因子maf-1,maf-2のcDNAクローンをラットから単離し、これらを用いて以下の研究成果が得られた. 1、Maf1,Maf2の基本性質の解析: Maf1,Maf2は既に解析されているvMafのDNA結合配列やヘテロ二量体形成能とかなり異なった性質を持っていた.Maf-1は-GCTGAC-を共通配列とするDNAに結合し、従来の報告より広い標的遺伝子の存在が示唆され、Maf-2はMaf-1に比べより厳格な配列のみを認識する.ヘテロ二量体形性の特異性については、vMafがJun,Fosどちらの関連因子にも結合するのに比べ、Maf1,Maf2はFos関連因子とのみ二量体を形成することが分かった.また、特にMaf-2はFosと二量体を形成することによって大きく結合配列が変化することが明らかとなった.このことがこれらの癌遺伝子の発癌活性に関与するのではないかと予想される.(Biochem.Biophys.Res.Commun.in press). 2、特異的発現部位における生理的機能の解析: 免疫組織化学的な方法、in-situハイブリダイゼーション法で軟骨、脊髄、目の水晶体での特異的な発現が確認され、Maf-1,Maf-2が細胞分化に関与していることが示唆された.(Oncogene 14,745-750.1997).脂肪細胞の分化は培養細胞で効率よく再現できるが、この過程でMaf-2の発現停止を見いだした.この発現停止は分化に重要な転写因子であるPPARγ、C/EBPαの発現に遅れて停止する.レトロウイルスに組み込んだMaf-2遺伝子を導入し、脂肪細胞分化を誘導した結果、分化が著しく抑制される結果が得られた.このことからMaf-2が脂肪細胞分化に抑制的に働き、分化を制御していることが明らかとなった.
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