研究概要 |
転写因子maf-1,maf-2のcDNAクローンをラットから単離し、これらを用いて以下の研究成果が得られた。 1、maf-1,maf-2遺伝子の構造と転写制御: maf-1,maf-2遺伝子は軟骨,脊髄,目の水晶体などの細胞分化にしたがって発現していることを報告してきた.脂肪細胞分化の過程では分化に従って発現が停止する.これらの特異的な発現制御機構を明らかにする為に,両者の遺伝子クローンを単離した.ラット及びマウスのmaf-1,maf-2遺伝子は両者ともイントロンを含まない遺伝子であった.プロモーター領域及び転写制御領域を調べるためレポータートランスフェクションアッセイを行った結果,ラットmaf-2遺伝子はMaf-2自身で転写の活性化が起こり,オート制御されている.MyoDによっても転写が促進される.筋肉細胞分化の過程でのmyoDとmaf-2の発現は相関が見られ筋肉分化の過程でも何らかの機能が考えられる.脂肪細胞分化の過程で重要な働きを持つ転写因子PPARgがこの遺伝子の転写を抑制し,脂肪細胞分化過程での発現停止にはPPARgが働いっているものと思われる. 2、発生分化に伴う特異的発現: in-situハイプリダイゼーション法や免疫組織化学的な方法で軟骨、脊髄、目の水晶体での特異的な発現が確認されたが,腎臓の発生に伴っても、maf-1,maf-2が極めて特異的に発現していることを見いだした. maf-1は胎生15日の糸球体の発生と共に発現し,腎臓の発生が完成する性おg2週間まで見られる.これに対してmaf-2は出生直前の胎生20日に初めて尿細管に検出され両者は異なった部位に発現する.maf-1,maf-2が腎臓の異なった部位,異なった時期に発現し,腎臓の発生,分化に関わっていることが示唆される.脊髄や目の水晶体でも空間的,時間的に極めて近いが異なった部位,時期に発現されており,これらが相互作用しながら異なった機能を持っていることが強く示唆される.
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