ラットアルドラーゼB遺伝子のプロモーター領域は肝細胞特異的な転写の制御領域としてのみでなく、この遺伝子が不活性化している肝癌細胞では複製開始領域としての機能も果たしている。細胞分化等におけるこの遺伝子領域の機能変換の意味を探るために、平成9年度は複製開始に必要な制御エレメントの同定とその機能の解析を主として行い、以下の成果を得た。 複製開始領域に欠失や変異を導入した複製開始領域をもつプラスミドを培養細胞に導入し、BrdUラベル法により複製効率をみた。その結果、転写開始点上流に隣接する200bp領域が転写、複製開始の両者に必須であることを明らかにした。また、この領域にある5箇所の転写のシスエレメントの各々に変異を導入したプラスミドの解析から、幾つかの転写シスエレメントそのものが複数開始に必要なエレメントとなっていること、肝癌細胞ではそれらのエレメントに細胞周期依存的にある種の制御因子が結合することを明らかにした。さらに、このような制御エレメントの1つに作用する制御因子を同定し、それがATP依存性のDNAヘリカーゼ活性を持つことを明らかにした。従って、200bp領域中のこのエレメントが複製開始に必要なDNA二重鎖の巻き戻しに関与していると考えられた。 現在、上記の複製開始エレメントに作用する因子及びその複数開始における機能を詳細に解析しているところである。
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