EBウイルスのoriPからのDNA複製はウイルス因子のEBNA1と細胞の複製因子によって開始され、細胞周期あたり約1回行われる。ほかのウイルス複製因子たとえばSV40のT抗原やBPVのE1はヘリケース活性を持ち、1回のS期で同一の複製起点から複製を複数回開始させることができる。したがってこれらウイルスのDNA複製はライセンシング制御を受けていない。一方、EBNA1はoriPに結合するがヘリケース活性は無く、しかも複製はS期に約1回行われる。そこでoriPからの複製が細胞ゲノムの複製と同様にライセンシング制御を受けている可能性が考えられた。 EBNA1を発現しているHeLa細胞(HeLa/EB1)にoriPを含むプラスミドを導入して、数日後細胞よりプラスミドを回収してDpnI/MboI法によりプラスミドの複製を検出する。このトランジェントアッセイ実験において、プラスミド導入と同時に細胞をノコダゾールで処理し細胞周期の進行をM期で止めると、導入後最初のS期で行われた複製のみを検出することができる。もしライセンシング制御を受けていなければ、この最初のS期で複製が複数回起こると期待される。oriPによる複製を調べてみると、このS期では複数回どころか複製はまったく行われないことが明らかになった。ノコダゾールを培地から除き細胞周期をM期から進行させると、次のS期以降ではoriPからの複製が確認された。また最初に約1細胞周期(24時間)培養してM期を通過させ、その後ノコダゾールで止めるた場合は、1回複製したプラスミドのみが検出された。これらの結果からoriPからの複製にはまずoriPがM期を通過することが必要であること。さらにM期通過後のS期には1回だけしか複製が行われないことを示していた。細胞DNAのMSM/P1による複製のラセンシングはM期からG1期にかけて行われ、しかもライセンシングは次のS期でのDNA複製に必須である。したがって、oriP複製にはM期通過が必要であることから、この複製がライセンシング制御を受けていることが示唆された。
|