研究概要 |
潜伏感染EBVゲノムは複製起点oriPによって1細胞周期に1回だけ複製され細胞に保持されている。この複製はウイルス因子としてはEBNA1のみがoriP結合因子として必要であり、また我々の研究から細胞の複製ライセンシング制御を受けていることも示唆されている。oriPからの複製はこの細胞周期に依存した制御と同時に、細胞膜受容体からのシグナル伝達による制御も受けていると考えられる。EBウイルスの膜タンパク質LMP1からのシグナル伝達はTNFRに類似していてTRAFやTRADDを経由してNF-κB,JNKを活性化させる。そこでoriP複製のトランジェントアッセイでLMP1を共発現させ、LMP1からのシグナル伝達がoriPの複製にどのような影警を及ぼすか検討した。その結果、LMP1はoriPの複製を抑制することが明らかになった。また変異LMP1を用いた実験から、シグナル伝達に重要な2つの細胞質側ドメイン、CTAR1とCTAR2のうちCTAR1がこの複製抑制に関与していることも明らかになった。CTAR1にはTRAFが結合するPxQxTモチーフが存在し、この配列に変異を加えると抑制活性がなくなることから、複製抑制シグナルの伝達にはTRAFが関与していることが示唆された。また、LMP1を発現させなくてもTRAF6とTRAF5を共に強発現させると、LMP1と同様の複製抑制が観察された。これらの結果はoriPからの複製がLMP1とさらに細抱の膜受容体からのTRAF6,TRAF5を介したシグナル伝達によって制御されていることを示していた。このシグナル伝達経路はNF-kB,JNK-stat,MAPKなどの既知の経路とは異なることも判明しており、本研究結果は新たなシグナル伝達経路の同定につながると考えられる。
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