当初の計画では、Tol2因子のクローンに人為的な改変を加え、これをメダカの受精卵に注入したのち回収し、大腸菌での薬剤耐性遺伝子の発現を指標として新規の転移を検出する予定であった。研究開始の直後に、より簡便で信頼性のある方法を考案したので、方法をこれに切り換えた。改良した点は、ニホンメダカの近縁種であるハイナンメダカとルソンイダカの間の交配を行い、大腸菌の実験系を含めずに、より自然に近い状態での転移を検出することである。Tol2因子はニホンメダカのほかにハイナンメダカにも存在し、ルソンメダカには存在しない。ハイナンメダカとルソンメダカは、交配で雑種をつくることができる。新計画の最初に、まずこのことを確認した。次に、雑種のルソンメダカヘの戻し交配を2回行い、Tol2因子の数を8分の1に減らした。1個体あたりの平均コピー数は、30ほどであったものが4となった。ここまで数を減らすことで、ゲノムサザン分析で個々のコピーを識別して追跡することが可能となった。ゲノムサザン分析で、子にはあるがその親の同じ場所にはないコピーがみつかった。この特徴は、そのコピーが新規に生じたものであることを意味する。
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