従来、高等動物細胞への熱ショック刺激はHSF1を活性化し、その結果熱ショック遺伝子群の転写活性化が引き起こされると考えるのが定説であった。我々は、トリの系での解析から、熱ショックなどのストレスにおいては独自に同定したHSF3が、HSF1とともに活性化をうけることを示し、互いに協調的に遺伝子発現の亢進に関わっていると推測していた。この仮説を検証するためHSF3の遺伝子破壊を行った。その結果、HSF3欠損ニワトリBリンパ球細胞DT40では、HSF1の存在下においても熱ショック応答が著しく抑制をうけた。つまり、トリにおいてHSF3は転写活性化に必須の因子であることが明らかとなり従来のモデルの再考を促した。次にその協調的制御機構にアプローチするために、HSF1あるいはHSF3の細胞内含量を制御してみた。その結果、過剰量のHSF1存在下でも熱ショック応答が回復しないことからHSF1とHSF3が機能的に異なることがわかった。さらに、HSF1の活性化(三量体形成)はHSF3の量に依存していることが明らかとなり、HSF1とHSF3の活性化の機構がリンクし、共通の負の制御因子が存在することが示唆された。 ヒトHSF4の選択的スプライシングにより得られた2つのアイソフォームHSF4aとHSF4bの機能的差異を解析したところ、HSF4aには転写活性可能がなく、一方HSF4bは非ストレス下で転写活性可能を持つことがわかった。また、HSF4bは熱ショックなどのストレスによってもその活性可能を亢進することが明らかとなった。マウス組織においてHSF4bのみが蛋白質レベルでその発現を脳と肺に認めた。以上、HSF4は選択的スプライシングにより組織特異的にその機能の制御をうけていることが明らかとなった。
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