研究概要 |
Mixed lineage kinase(MLK)と呼ばれる酵素群に属するMSTは、発現ベクターを用いて細胞内で高発現させることによりSEK1を介したJNK/SAPK活性化を誘導する。MSTはSEK1を直接リン酸化して活性化するタンパク質リン酸化酵素であるが、本研究ではこのSEK1以外にもMSTによるリン酸化を受け活性化され、JNK/SAPK活性化を誘導する酵素をCOS1細胞抽出液中に見い出した。これは最近のその一次構造が明らかにされたJNK/SAPK活性化酵素であるMKK7であることが判明し、さらにMSTはSEK1よりもこのMKK7をより効率よく活性化することを見いだした。SEK1とMKK7は同じJNK/SAPKを活性化する酵素でありながら異なる細胞刺激に応じて活性化されることが報告されており、MSTがこれらの酵素に対してことなる活性化能を示すというこの度の発見は、JNK/SAPK活性化を引き起こすシグナル伝達の分子機構を解明するうえで重要な手がかりとなると考えられる。 このMSTは細胞内にごく微量発現させるのみで強力にJNK/SAPKを活性化することから、この発現量は生体内において厳密に制御されているものと考えられる。そしてこのことはMSTの活性がその発現量により制御されていることを意味する。現在MSTの発現がどう制御されているかについてNorthern Blotting,Western Blottingによる解析を進めると伴にその発現調節機構について検討を進めている。
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