研究概要 |
サイクリンEと会合するE6AP類似ユビキチンリガーゼCeb1の完全長のcDNAの解析より、Ceb1が1024アミノ酸、120kdの蛋白質であることを明らかにした。mRNAと蛋白質レベルの両方で発現を調べたところ、腸瘍由来の細胞株でのみ発現が見られ、正常組織や正常線維芽細胞ではほとんど発現が見られなかった。細胞内局在を特異抗体で調べたところ、顕著な核局在が検出され、核局在シグナルはN末端のアルギニンに富む領域に存在する。Ceb1のサイクリンE結合領域はユビキチンリガーゼとしてもっとも解析が進んでいるE6APの活性を担うカルボキシ末端のHectドメインに相当する領域よりも外側に特定できた。この部分はE6AP類似ユビキチンリガーゼ一般の基質結合領域に相当することからサイクリンEがCeb1の基質である可能性が高い。興味あることにアミノ末端部分でもCeb1はサイクリンEに会合し、サイクリンE-Cdk2によりリン酸化される。発現ががん化した細胞株に限定されることはCeb1のがん化の過程や形質との関係を予想させる。今後、Ceb1と各種がん遺伝子、がん抑制遺伝子との関係とサイクリンEとの関係についてあきらかにしていく。 以上の結果は未発表であるが、近々学術雑誌に発表予定である。 p21と会合するZincフィンガー蛋白として単離したWazlは完全長cDNAの解析より899アミノ酸の核蛋白をコードすることがわかった。Wazlは6箇所のCDKによってリン酸化可能な部位を持つことから、p21と会合するサイクリンA-Cdk2,サイクリンE-Cdk2の基質である可能性が高い。またCDKの基質が多数存在する核マトリックスに局在する事実もまたWazlがCDKの基質であることを支持する。 今後、in vitro,in vivoの両方からWazlがCDKの基質であるかを中心に調べていく。
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