平成9年度の研究によりPEBP2fβ-SMMHCキメラ蛋白が、Fアクチンを含むストレス・ファイバーの構築を崩壊させ、細胞形態の変化を引き起こすこと、及びPEBP2依存性の転写を脱制御することの二面的作用を有することを示した。これら二つの異なる作用は各々、キメラ蛋白の細胞膜及び核内の局在に依存している。以上の知見は骨格筋由来のC2細胞に、キメラcDNAをトランスフェクトすることにより得られた。 そこで本年度は、PEBP2β-SMMHCキメラ蛋白を内在性に発現している、ME-1細胞を用いて、キメラ蛋白の局在及び細胞骨格につき解析した。ME-1細胞は第16番染色体の逆位を有する、ヒト急性骨髄性白血病に由来する細胞株である。その結果、 1) ME-1細胞を細胞質・細胞膜・核に分画してウエスタン・プロットを行った。キメラ蛋白は細胞膜と核に分布した。一方PEBP2転写因子のDNA結合性サブユニット(これはPEBP2β、PEBP2β-SMMHCのパートナーである)は、核画分にのみ検出された。 2) ME-1細胞の表面は多数のfillopodiaを有することを、走査電子顕微鏡及びアクチン染色により観察した。 PEBP2βSMMHCキメラ蛋白が細胞骨格・核において、二面的作用を有することは、白血病細胞そのものにも該当することが明らかとなった。
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