本研究は、高等動物の性周期における黄体の形成(黄体細胞の分化や増殖)や退縮(細胞死)および妊娠期における黄体機能維持などの黄体の形態・機能変化に、プロスタグランジン(PG)F_<2α>がどの様な形で関わっているのか、その機能の多様性の分化メカニズムを受容体サイドから明らかにすることを目的として行ったものである。1、まず性ホルモン(PMSG/hCG)処理により偽妊娠誘導を行ったWisterラット(25週齢、雌)から経時的に黄体RNAを調製し、PCR法やハイブリダイゼーション法により受容体mRNA(5kb)の発現変化を詳しく調べた。その結果、黄体の成熟にともなう発現量の段階的な増加と退縮に先立つ急激な減少が観察され、また黄体に分化する直前の卵胞細胞においても卵胞の成熟と共に序々に発現量が増加することが認められた。従って、PGF_<2α>受容体は黄体の変化と共に著しい発現量の制御が行われ、同一組織内において複数の生理機能に関与し得ることが示唆された。2、さらにゲルシフト法やDNAseフットプリント法により、PGF_<2α>受容体遺伝子の転写プロモーター領域の解析を行ったところ、性周期初期の黄体細胞核抽出液中においてプロモーターDNA領域(A領域、2kb)に特異的に結合するタンパク質因子が複数存在することが明らかになった。現在までにこのタンパク質のcDNAクローンが複数単離出来ており、プロモーター領域との作用部位や被リン酸化部位などを調べることにより、性周期依存的な転写調節因子としての作用のメカニズムを調べつつあるところである。3、さらに受容体の機能部位を同定するために、第7膜貫通領域(Arg)やC端領域のPKCリン酸化部位における変異体cDNAを作製しており、培養黄体細胞内で一時的に発現させることにより受容体タンパク質の作用メカニズムを生化学的に解析しているところでもある。
|