1) ウシ精子レセプター活性を持つ高マンノース型糖鎖Man_5GlcNAc_2が、透明帯糖タンパク質三成分のいずれに存在しているかを調べた。精製ZPBから得たN-結合型糖鎖にはMan_5GlcNAc_2が存在していた。しかし、透明帯を熱処理で可溶化する際に、糖タンパク質にわずかに存在するSH基が引き金になってSS結合を介するヘテロポリマーが形成されHPLCでZPAと共に溶出されることがわかり、ポリマーを除く操作を試みている。 2) 当研究室では既に、ブタZPBではN末端領域に、ZPCではC末端領域に精子レセプター活性糖鎖が存在していることを明かにした。ウシのZPAとZPBは未だアミノ酸配列が決定されていないが、それぞれブタのZPAおよびZPBと相同性を持つので、Man_5GlcNAc_2が結合している糖ペプチドが得られれば、その部分アミノ酸配列から糖鎖結合領域を決めることが可能である。ウシ透明帯糖タンパク質の収量はきわめて少ないので、試料を集めるのに時間がかかりこの実験も現在進行中である。 3) レセプター活性をもつMan_5GlcNAc_2の非還元末端のα-Manを2残基除去したMan_5GlcNAc_2、α-Man残基をもたないManGlcNAc_2およびα-メチルマンノシドのウシ体外受精への阻害効果をしらべた結果、Man_5GlcNAc_2の阻害効果が1番大きかったが、他の糖鎖も弱いながら阻害することがわかった。 4) 受精卵への精子結合数を測定したところ、未受精卵に比べ半減することがわかった。未受精卵をシアリダーゼ処理し大部分のシアル酸を除去すると、やはり精子結合数は半減した。これらの結果は、受精の際卵細胞から放出されるシアリダーゼがシアル酸の大部分を除去し精子が結合しにくくなることを示している。シアル酸含有糖鎖の間接的な機能も考えられ、現在シアル酸含有糖鎖のレセプター活性を調べると共にシアル酸の結合様式も分析中である。
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