(平成9年度) 1) 精子・卵子間の結合阻害活性を測定する競合法で、ウシ精子レセプター活性は透明帯糖タンパク質の糖鎖側にあることを確認した。2)ウシの精子は、主として透明帯糖タンパク質の高マンノース型糖鎖Man_5GlcNAc_2に結合することを明かにした。マウスの精子はO-結合型糖鎖の非還元末端のα-ガラクトース残基に、ブタの精子はN-結合型糖鎖の非還元末端のβ-ガラクトース残基に結合するとの報告は既に提出されている。これらと本研究のウシの系での結果は、哺乳類の種特異的精子卵子間結合の実態が徐々にわかりはじめたことを示している。3)O-結合型糖鎖の活性を調べるためアルカリ処理の種々の条件でO-結合型糖鎖を得ようとしたが、いずれの条件下でもN-結合型糖鎖の一部も切り出されてしまい、O-結合型糖鎖だけ得ることはできながった。 (平成10年度) 1) レセプター活性糖鎖は、透明帯糖タンパク質3成分のうち、ZPBに主に存在しているとの結果も得た。しかしZPAにはヘテロポリマーが混在していることがわかり、現在このポリマーを除去する操作法を工夫している。2)活性糖鎖が結合している領域の特定も行おうとしているが、糖タンパク質の収量がブタの場合の20分の一と少ないため結論には至っていない。3)レセプター活性をもつ糖鎖及びその非還元末端からα-マンノース残基を除去した2種類の糖鎖とα-メチルマンノシドについて体外受精の阻害効果を調べた結果、Man_5GlcNAc_2の阻害活性が1番高かったが、他の糖鎖も若干阻害することがわかった。4)受精卵への精子結合数は未受精卵に比べ半減することがわかった。未受精卵をシアリダーゼ処理しシアル酸を除去すると、やはり精子結合数は半減した。これらの結果は、受精の際卵細胞から放出されるシアリダーゼがシアル酸の大部分を除去し精子が結合しにくくなることを示している。
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