本研究は、網膜における視物質の代謝に中心的な役割を果たしている、レチノイド結合蛋白質をショウジョウバエにおいて同定し、その機能を解析することによって無脊椎動物の光受容機構を解明しようとするものである。本年度は脊椎動物でレチノイドの代謝に関与していると考えられているRPE65遺伝子と相同性の高い遺伝子を探索した。脊椎動物のRPE65蛋白質は網膜色素細胞に局在する蛋白質で、一次構造が魚類から哺乳類まで非常によく保存されていることや、RPE65遺伝子が視細胞変性の原因遺伝子の一つであることから、視機能に重要な役割を果たしていると考えられている。そこで、ニワトリのRPE65遺伝子の配列を元にPCR法等で、ショウジョウバエ成虫頭部のcDNAライブラリーから、約2500塩基対のcDNAクローン(Drosophila RPE65)を単離した。ORFから予想された蛋白質のアミノ酸配列はニワトリのRPE65蛋白質と37%の相同性があり、他の脊椎動物とも35%以上の相同性があった。Drosophila RPE65遺伝子の発現様式をノーザン解析で調べたところ、この遺伝子が頭部でのみ発現していることがわかった。また、線虫C.elegansのゲノムデータベースよりDrosophila RPE65と相同性の高い配列を見出し、このうち2カ所の配列が脊椎動物でもよく保存されていることがわかった。C.elegansにはオプシンがないことを考えると、この遺伝子が、無脊椎動物では視覚以外の機能にも関与している可能性が考えられた。
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