本研究の目的は、出芽酵母の性フェロモンによるカルシウムシグナルの発生と受容伝達の分子機構を明らかにすることである。前年度までに、Ca^<2+>の流入に欠損を持つmid1変異株とMID1遺伝子の研究を行い、MID1遺伝子産物(Mid1)がCa^<2+>透過性陽イオンチャネルであることを発見している(論文投稿中)。本年度はカルシウムシグナルの伝達経路を明らかにする目的で、第一に、mid1変異と合成致死となる変異をもつ突然変異株を単離することを試みた。その結果、40株の合成致死変異株を単離することに成功した。これらの中には、MID1遺伝子と同じはたらきをもつ遺伝子、またはMID1遺伝子と協調的にはたらく遺伝子が存在すると期待される。現在そのうちの1株(ts11株)の合成致死変異をもつ遺伝子のクローニングを行っており、間もなくその遺伝子の塩基配列を決定する予定である。第二に、Mid1の膜貫通領域の1つであるH2ドメインがMid1のイオンチャネルとして機能する上で重要かどうか調べる目的で、H2ドメインなかのアスパラギン酸を他のアミノ酸7種にそれぞれ変換した変異導入タンパク質を合成した。現在そのタンパク質をチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)で発現させ、パッチクランプ法でそれらのイオン透過性を調べているところである。第三に、mid1変異株7株からそれぞれ変異遺伝子を単離した。現在それらの変異遺伝子はどの部位にどのような変異が起こっているかを調べるために、それぞれの塩基配列を決定しているところである。この解析から、Mid1の機能にとって重要な部位を特定することができると期待される。
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