増幅したがん遺伝子が局在するDMが、がん細胞から排出されるとその細胞は脱がん化、文化する。このことは、現在臨床応用が期待されている。DMの排出は、DMが細胞質に生じた微小核へ選択的に取り込まれることが関与すると考えられてきた。しかし、微小核に取り込まれるだけでは真の排出にはなっていない。本研究により、DMを選択的に取り込んだ微小核が実際に細胞外に排出されることが見出された。さらに、このような細胞外微小核の性状に関して詳細に検討することができた。すなわち、細胞外微小核の核膜を蛍光抗体法で検討したところ、ラミン蛋白質の発現に関して正常な核膜が検出された。また、細胞質膜に局在する蛋白質(GFP-GAP融合蛋白質)の発現から、正常な細胞質膜をもつことが示唆された。また、アポトーシスの際のDNA分解を検出するための方法(TUNEL法)を用いて、細胞外微小核の中のDNAは、少なくとも激しい分解を受けていないことが示された。さらに我々は、細胞外微小核を極めて生理的な条件で精製する方法を樹立することができた。精製された細胞外微小核の中にはDM上で増幅しているがん遺伝子(c-myc)が、染色体上の単一コピー遺伝子(b-globin)の約1000倍量濃縮されていた。以上の成果は、DMを細胞外に排出する重要なステップの理解を深め、DMの排出を誘導することによるがんの治療法樹立に貢献できると考えられるため、現在投稿準備中である。さらに、細胞外微小核を介してDMを細胞間で転移させることが可能か否かを検討する実験が現在進行中である。上記のような細胞外微小核の性状に関する結果は、この実験が可能であることを示唆している。
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