研究概要 |
増幅したがん遺伝子が局在するDMは広範ながん細胞に見られる。我々は、DMが排出されることにより、がん細胞が脱がん化、分化することを見い出した。DMの排出は、細胞質に生じた微小核への選択的な取り込みを介することは以前の研究で示されていたが、その後どのようにして排出に至るのかに関しては不明であった。本研究により、微小核が細胞外は放出されること、及びその機構によりDMの排出が定量的に説明できることがが明らかとなった。細胞外の微小核は、DMを高度に濃縮しており、見かけ上正常な細胞質膜と核膜を持ち、その中のDNAは少なくとも激しい分解を受けていなかった。また、細胞外微小核を極めて生理的な条件で効率的に精製することが可能となった(投稿中)。細胞外微小核のこのような性状から、それを介して細胞間でDMが転移する可能性が考えられた。このような可能性は極めて重要な意味を持つため、執拗に検討を行った。しかし、どのような条件を用いても細胞間でDMが転移させることはできなかった。一方、このようなDMの細胞間転移は起こりえない理由を明らかにすることもまた臨床応用上重要な意味を持つ。そこで、DMの細胞内動態と、微小核を介する排出機構に焦点を当てて研究を行った結果、大きな成果が得られた。具体的には、DMの間期細胞内での細胞周期進行にともなう動態を詳細に検討した結果、染色体外遺伝因子の今まで知られていなかった極めて興味深く重要な挙動が明らかになった。(J.Cell Biol.,1998;J.Cell Science,1998;および、複数の投稿準備中の論文),すなわち、DMは細胞分裂期に染色体末端に付着して娘細胞へ分配されるが、そのような機構から脱落したDMが細胞質に残り、DNA合成期に微小核へ取り込まれることが明らかになった。すなわち、微小核の中のDMは何らかの構造的欠陥を持つことが示唆された。
|