研究概要 |
インターフェロン(IFN)の細胞増殖抑制の分子機構を明らかにするため、IFN感受性Daudi細胞株(Daudi-S)より耐性亜株(Daudi-R)を樹立し、以下の研究を行った。 (1)IFN反応性分子の発現と機能についての検討:Daudi-SとDaudi-Rの間で、IFNのシグナル伝達に関与する分子群(IFN受容体、STAT-1、ATAT-2など)、IFN反応性分子(2'-5'AS、RNaseLなど)の発現に差はなく、耐性化の原因はIFNによって発現が修飾される核内遺伝子群にあると推定された。その一つとしてアポトーシス誘導因子であるICEの発現が、Daudi-Rにおいて特異的に欠損していることがわかった。そこでまずICE遺伝子の転写調節機序について検討し、ICE発現はinitiator elementへのIRF-1の結合により制御されていることを明らかにした。Daudi-Rにおいては親株に比べ、IFNによるIRF-1の誘導性が低下していた(Mol.Cell.Biol.投稿中)。一方、久留米大学の吉村教授と共同研究を行い、Daudi-R細胞においては、STATの活性化を特異的に阻止する因子であるJABの発現が異常に亢進していることを見い出した(Blood投稿中)。このようにIFN耐性の機構には種々のタイプがあり、さらなる研究が必要と考えられる。 (2)IFNによる転写因子E2Fの抑制とその機構:IFNが、種々の増殖関連遺伝子の発現を促進する転写因子であるE2Fの活性を抑制することを明らかにした(J.Biol.Chem.272:12406-12414,1997)。さらにその機序として、IFNがE2Fのサブユニットの一つであるE2F-1の転写を抑制することを見い出し、その際、IFNによって転写抑制性複合体であるE2F-4/pRB、E2F-4/p130の形成が誘導されることがわかった(J.Biol.Chem.投稿中)。
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